本業の経験をコミュニティに活かす コミュニティ活動が本業にもたらす好循環
会社員として日々働きながら、並行して自身のコミュニティを運営されている方は少なくありません。多忙な本業との両立に難しさを感じたり、コミュニティ運営に十分な時間が割けず悩んだりすることもあるでしょう。しかし、見方を変えれば、本業で培った経験やスキルはコミュニティ運営において大きな財産となり得ます。そして、コミュニティ運営で得られる経験は、本業にも良い影響をもたらす可能性があります。
本稿では、会社員運営者がどのように本業とコミュニティ運営の間で好循環を生み出すかについて、具体的な視点やヒントを交えてご紹介します。
本業で培った経験やスキルをコミュニティ運営に活かす視点
会社員として働くなかで、私たちは様々なスキルや知識、経験を自然と身につけています。これらは、意識することでそのままコミュニティ運営に役立てることが可能です。
コミュニケーション能力・対人スキル
職場で同僚、上司、部下、顧客など多様な立場の人々と関わる中で培われるコミュニケーション能力は、コミュニティメンバー間の関係構築や、意見の調整に直接的に活かせます。傾聴力、適切な言葉遣い、分かりやすい説明などは、オンラインコミュニティでのテキストベースのやり取りや、Zoomなどでの交流においても非常に重要です。
企画・提案力
会議資料の作成や新しいプロジェクトの立ち上げなどで求められる企画力や提案力は、コミュニティイベントの企画、新しいコンテンツのアイデア出し、活動方針の提案といった場面で役立ちます。ターゲット(コミュニティメンバー)のニーズを踏まえ、目的を明確にして計画を立てるプロセスは、ビジネスシーンと共通しています。
マネジメント・調整能力
チームの進捗管理やメンバー間の意見調整、利害関係者の協力を得る経験は、コミュニティ内のルール整備、トラブル対応、メンバーの役割分担、イベントのタイムマネジメントなどに活用できます。組織を円滑に運営するための視点は、コミュニティ運営においても非常に有効です。
専門知識・業界経験
もしあなたがコミュニティのテーマと関連する分野で働いているなら、その専門知識や業界経験はコミュニティの核となる価値となります。信頼性のある情報提供者として、メンバーからの質問に答えたり、深い洞察を提供したりすることで、コミュニティの質を高めることができます。
事務処理・効率化スキル
日々の業務で身につけた文書作成、データ管理、スケジューリング、タスク管理などの事務処理スキルは、コミュニティ運営の効率化に直結します。例えば、イベント告知文を分かりやすくまとめる、メンバーリストを管理する、定型的な連絡作業を効率化するといったことは、運営負担を減らす上で重要です。
これらのスキルは、特別な研修を受けたものでなくとも、日々の業務を通じて自然と身についているものです。改めて自身のキャリアを振り返り、「これはコミュニティ運営に活かせそうだ」という視点で見直してみてください。
コミュニティ運営を通じて得られる経験が本業にもたらす好循環
次に、コミュニティ運営という活動自体が、あなたの本業にどのようにポジティブな影響を与えうるかを見ていきましょう。
新しいコミュニケーション能力の獲得
オンラインコミュニティでは、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人々との関わりが生まれます。ビジネスの関係性とは異なるフラットな人間関係の中でのコミュニケーションは、本業での社内外の人との関わり方にも新たな気づきを与えてくれることがあります。特に、世代の異なるメンバーや、普段接点のないタイプの人との交流は、自身のコミュニケーションの幅を広げます。
リーダーシップとファシリテーション能力の向上
コミュニティの方向性を定めたり、メンバーの議論を促進したりする経験は、チームリーダーシップや会議のファシリテーション能力を高めます。メンバーの意見を引き出し、まとめ、建設的な議論に導くスキルは、本業のプロジェクト進行やチーム運営において非常に役立ちます。
課題解決能力と柔軟性の向上
コミュニティ運営では、メンバー間の意見の衝突、技術的なトラブル、想定外の出来事など、様々な課題に直面します。これらを一つ一つ乗り越えていく経験は、予期せぬ問題への対応力や、状況に応じた柔軟な思考力を養います。本業で難しい局面に立たされた際、この経験が冷静な判断や新しい解決策の発想につながることがあります。
ネットワーキングと思考の広がり
コミュニティ運営を通じて、自身の業界とは異なる分野の人々と知り合う機会が得られます。これにより、新しい情報や視点に触れることができ、思考の幅が広がります。これが、本業における新しいアイデアの発見や、異なる分野との連携の可能性につながることもあります。
デジタルツール活用能力の向上
コミュニティをオンラインで運営する過程で、Facebookグループ、LINEオープンチャット、Zoom、簡単なウェブサイト作成ツールなど、様々なデジタルツールを使用することになります。これらのツールを使いこなすスキルは、本業でのリモートワークやオンライン会議が一般的になった現代において、非常に価値のあるものとなります。
本業とコミュニティ活動の両立と相乗効果を高めるヒント
本業とコミュニティ活動を無理なく両立させながら、意図的に相乗効果を生み出すための具体的なヒントをいくつかご紹介します。
- 自身のスキルの棚卸しを行う: 本業でどんな業務をこなし、どのようなスキルを習得したか、リストアップしてみましょう。そして、それぞれのスキルがコミュニティ運営のどの側面に活かせるかを考えてみてください。
- コミュニティ運営で意識的に学びを得る: コミュニティでのメンバーとのやり取りやイベント運営を通じて、「これは本業でも活かせそうだ」と感じたことを意識的にメモしたり、振り返ったりする習慣をつけましょう。
- 両活動のシナジーを意図的に創り出す: 例えば、本業で得た最新の業界情報をコミュニティで共有する、コミュニティメンバーに本業に関連するテーマでアンケートを取り、その結果を本業の業務改善のヒントにする、といった試みも可能です(個人情報や機密情報には十分配慮してください)。
- 時間管理を徹底する: 多忙な中で活動を続けるには、効率的な時間管理が不可欠です。コミュニティ活動に費やす時間を事前に決め、本業のスケジュールとバランスを取りましょう。スマートフォンの通知をオフにする、特定の時間帯だけコミュニティ関連の作業を行うなど、集中できる環境を作る工夫も有効です。
- 完璧を目指さない: 本業もコミュニティ運営も、全てを完璧にこなそうとすると燃え尽きにつながります。優先順位をつけ、全てを一人で抱え込まず、時にはメンバーに協力を仰ぐことも重要です。両方を楽しむ姿勢が継続の鍵です。
事例に学ぶ相乗効果
ある会社員運営者の例です。本業でチームを率いるマネージャー職に就いていた彼は、コミュニティ運営においても自然とメンバー間のコミュニケーションを促進し、意見がまとまりやすい雰囲気を作ることに長けていました。彼は本業で培ったプレゼンテーションスキルを活かし、コミュニティのオンラインイベントで分かりやすい説明を行い、メンバーからの信頼を得ました。
一方で、コミュニティ運営を通じて、彼はそれまで接点のなかった多様な価値観を持つ人々と深く交流する中で、自身の思考の枠が広がるのを感じたと言います。また、オンラインツールを駆使してイベントを企画・実行する経験は、本業でのリモートワーク環境下での新しいプロジェクト推進にも役立ったとのことです。このように、本業とコミュニティ運営は、互いの活動を豊かにし合う関係になり得るのです。
まとめ
会社員として本業を持ちながらコミュニティを運営することは、確かに時間的・精神的な負担を伴う場合があります。しかし、本業で培った経験やスキルをコミュニティに活かし、コミュニティ運営で得られる新たなスキルや視点を本業に還元するという「好循環」を生み出すことが可能です。
本稿でご紹介した視点やヒントが、あなたのコミュニティ運営、そして本業におけるさらなる成長のヒントとなれば幸いです。無理なく、楽しみながら、両方の活動から最大限の価値を引き出してください。