静かなコミュニティを動かす メンバーの「得意」や「関心」を活動につなげる具体策
コミュニティ運営に携わる中で、このようなお悩みはありませんでしょうか。
「参加者数はそれなりにいるのに、いつも投稿したり発言したりするのは一部のメンバーだけだ」 「多くのメンバーは静観していて、コミュニティ全体として盛り上がりに欠けるように感じる」
これは、多くのコミュニティ運営者が直面する共通の課題です。メンバーが受け身になってしまい、一部の活発なメンバーか運営者しか動いていない状況では、コミュニティの継続的な成長や活性化は難しくなります。
しかし、あなたのコミュニティにも、まだ眠っている「得意」や「関心」を持つメンバーは必ずいます。彼らが持つスキルや熱意を引き出し、コミュニティ活動に自然な形でつなげることができれば、コミュニティ全体の主体性が高まり、活気を取り戻すことが可能です。
この記事では、技術的なスキルに自信がない運営者の方でも実践できる、メンバーの「得意」や「関心」を見つけ出し、コミュニティの活性化につなげる具体的なステップとヒントをご紹介します。
なぜ、あなたのコミュニティでは一部のメンバーしか活動しないのか
メンバーが活動しない背景には、いくつかの理由が考えられます。
- きっかけがない: 何か貢献したい気持ちはあっても、具体的に何をすれば良いのか分からない。
- 遠慮: 自分の発言や行動がコミュニティの調和を乱さないか心配している。
- 自信がない: 自分の知識やスキルが他のメンバーにとって役に立つか不安を感じている。
- 運営者依存: 運営者が提供する情報や企画を「受け取る側」だと認識している。
- 忙しさ: リアルでの生活や仕事が忙しく、積極的に関わる時間や心の余裕がない。
これらの要因が複合的に絡み合い、多くのメンバーが「サイレントメンバー」(閲覧はしているが発言や投稿はしないメンバー)になってしまう傾向があります。運営者としては、これらの背景を理解した上で、メンバーが「自分も参加しても大丈夫なんだ」「自分の得意なことで貢献できるんだ」と感じられるような働きかけを行うことが重要です。
ステップ1: メンバーの「得意」や「関心」を知るための働きかけ
メンバーの隠れた才能や情熱を引き出す第一歩は、運営者が意図的に彼らの情報を「知る」機会を作ることです。
- 自己紹介フォーマットの工夫: コミュニティ参加時の自己紹介で、単に「よろしくお願いします」だけでなく、「最近個人的に興味があること」「コミュニティでこんなことができたら面白そうと思うこと」「こんな知識なら少し話せます」といった項目を含めるよう推奨します。これはFacebookグループの参加時質問機能や、LINEオープンチャットのノート、専用の投稿などで実現できます。
- 日常的なコミュニケーションの中での観察: メンバーの何気ない投稿や発言、他のメンバーへのコメントなどから、彼らの興味分野や詳しい話題を注意深く観察します。「〇〇さん、あの件に詳しいんですね」のように反応することで、さらに情報を引き出せることもあります。
- 個別でのメッセージや軽いヒアリング: 特に長く在籍しているメンバーや、過去に少しでも貢献してくれたメンバーに対して、個別に「最近いかがですか?」「コミュニティで何かやってみたいことはありますか?」といったメッセージを送ってみることも有効です。Zoomなどで短時間話す機会を作るのも良いでしょう。
- アンケートの実施: 定期的に簡単なアンケートを実施し、「あなたがコミュニティで最も関心のあるトピックは何ですか?」「もし機会があれば、コミュニティ内でどのようなことで貢献してみたいですか?」「あなたの得意なことは何ですか?」といった項目を含めます。Googleフォームなど、無料かつ簡単に使えるツールで実施できます。
重要なのは、これらの働きかけを通じて得た情報を、運営者側でしっかりと記録・把握しておくことです。
ステップ2: 見つけ出した「得意」や「関心」を活動につなげる具体的なアプローチ
メンバーの「得意」や「関心」が分かったら、次はそれを具体的なコミュニティ活動につなげる方法を考えます。ペルソナの技術スキルレベルを考慮し、既存ツールで実現可能な、無理のない範囲でのアプローチを提案します。
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小さな「お願い」から始める:
- 特定のトピックに関する質問が出た際に、「〇〇さん、この件詳しいですよね。もしよかったら〇〇さんの視点からの意見を教えていただけませんか?」のように、名指しで協力を依頼する。
- イベント開催時に、簡単な準備(例: オンライン会議のURL共有投稿、関連情報の事前告知)を手伝ってもらえないか打診する。
- 特定のテーマで、おすすめの情報(記事、本、動画など)をまとめて投稿してもらうことを依頼する。
これらの「お願い」は、メンバーにとって負担が少なく、「自分でも貢献できた」という成功体験につながりやすいです。
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ミニ企画やイベントの共同開催を提案する:
- 例えば、写真が趣味のメンバーがいれば、「〇〇さん写真お上手なので、コミュニティ内で『私の街の風景』みたいなテーマでオンライン写真展を企画しませんか?運営は私がサポートします」と提案する。
- 特定の分野に詳しいメンバーがいれば、「〇〇さんの専門知識を学ぶオンラインお茶会をZoomで開きませんか?進行はサポートします」と提案する。
- 料理好きなメンバーがいれば、オンラインで簡単なレシピを共有したり、作ったものを紹介し合う投稿企画を提案したりする。
共同開催形式にすることで、メンバーは一人で企画・実行するよりも心理的なハードルが下がります。運営者は企画の枠組みや告知、ツールの設定などをサポートし、メンバーには内容の部分を任せるようにします。
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情報発信の役割を与える:
- 特定の分野に詳しいメンバーに、週に一度、その分野に関するニュースやコラムを投稿してもらう役割を担ってもらう。
- 読書会コミュニティであれば、特定の回の「ファシリテーター」(進行役)をお願いしてみる。
運営者自身が全ての発信を行うのではなく、メンバーにも情報発信の機会を与えることで、コミュニティの情報が多様になり、メンバー自身の学びやアウトプットの場にもなります。
ステップ3: メンバーの活動を継続させるための運営者のサポート
一度活動に関わってくれたメンバーが、「またやってみたい」と思えるような環境を作ることも重要です。
- 感謝と承認を伝える: メンバーが貢献してくれたら、すぐに具体的に「〇〇さんが〇〇してくれたおかげで、とても助かりました」「〇〇さんの投稿、すごく勉強になりました」のように感謝の気持ちと、その貢献がコミュニティにとってどれだけ有益だったかを具体的に伝えます。オープンな場(コミュニティ全体への投稿)で承認することで、他のメンバーへの良い刺激にもなります。
- 活動の「ハードル」を下げる: メンバーが提案してくれたアイデアに対して、最初から完璧を求めず、「まずはテスト的に小さくやってみましょう」「できる範囲で大丈夫です」と伝え、気楽に取り組める雰囲気を作ります。
- 運営者も一緒に楽しむ姿勢を見せる: メンバーが企画・実行した活動に、運営者自身も積極的に参加し、楽しむ様子を見せることで、メンバーは「自分の企画は受け入れられている」「運営者も応援してくれている」と感じることができます。
- 強制ではなく「お願い」のスタンスを保つ: あくまで「もしよかったら」というスタンスで協力を依頼し、断られても全く問題ないことを明確にします。強制力を持たせると、メンバーは負担に感じてしまい、かえって離れていく可能性があります。
- 本業との両立に配慮する: メンバーに役割をお願いする際も、彼らが多忙な中で時間を作ってくれていることを理解し、無理のない範囲での関わりを提案します。運営者自身も、自身の本業との両立を考え、全てを一人で抱え込まないよう、メンバーとの協働をうまく取り入れる意識を持つことが大切です。
事例に学ぶ: メンバーの得意を活かしてコミュニティを活性化させた例
ある地域の歴史をテーマにしたオンラインコミュニティでの事例をご紹介します。このコミュニティは当初、運営者による歴史コラムの投稿が中心で、メンバーの発言は限定的でした。運営者は、一部のメンバーが過去の古地図や古い写真に強い関心を持っていることに気づきました。
そこで運営者は、古地図に関心があるAさんに「もしよかったら、この地域の古い地図の読み解き方について、知っていることを簡単に投稿でシェアしてもらえませんか?」と依頼しました。Aさんは快諾し、数回に分けて地図の見方を解説する投稿を始めました。すると、他のメンバーから「うちにも古い地図があるんだけど見てほしい」「この地図のこの場所は何?」といった質問が活発に寄せられるようになり、Aさんはそれに応える形でさらに詳しい情報や解説を投稿するようになりました。
また、古い写真に詳しいBさんには、「コミュニティのアルバム機能を使って、皆さんの持っている昔の写真を投稿し合う企画をやりませんか?投稿の呼びかけと、写真にまつわる簡単なエピソードの紹介をお願いできますか?」と提案しました。Bさんが企画の投稿をすると、次々とメンバーが自身の持つ古い写真を共有し始め、写真に写る場所や人物について思い出を語り合うなど、活発な交流が生まれました。
この事例のように、メンバーの持つ「得意」や「関心」は、必ずしも専門家レベルのものである必要はありません。少し詳しい、少し好きな、といったレベルでも、それが他のメンバーにとって価値のある情報や活動につながることは多々あります。運営者がそれを見つけ出し、小さなきっかけを提供することで、メンバーは主体的に関わる一歩を踏み出しやすくなります。
まとめ: 小さな一歩がコミュニティを大きく動かす
コミュニティの活性化に悩む時、すべてを運営者一人で背負い込む必要はありません。コミュニティに集まっている「人」こそが最大の資産です。メンバー一人ひとりが持つ「得意」や「関心」に目を向け、それをコミュニティ活動に活かす機会を意図的に作り出すことで、静的だったコミュニティに活気を取り戻し、メンバー全体の主体性を高めることができます。
まずは、あなたのコミュニティメンバーの中に、どんな隠れた才能や情熱があるのかを知ることから始めてみましょう。そして、見つけ出したそれらを、スモールステップでコミュニティ活動につなげる提案をしてみてください。
小さな一歩が、あなたのコミュニティを大きく動かすきっかけとなるはずです。